熱マネジメント技術

機能性と安全性を両立させる、アルプスアルパインの熱マネジメント技術

車載機器やデジタルデバイスの高性能化に伴い、熱設計は製品の性能・信頼性・安全性を左右する重要な技術となっています。アルプスアルパインは、高度な熱設計、熱解析、熱評価、先端放熱技術を組み合わせた熱マネジメント技術により、発熱を最適に制御しながら、デジタルデバイスの高性能化と小型化の両立を実現しています。

熱設計技術

熱設計はなぜ必要なのか?

電子機器には半導体チップを実装した電子回路基板が搭載されており、動作時には発熱します。熱対策が不十分な場合、高温による発火・発煙や誤動作、部品の早期故障などを引き起こし、安全性や機能・性能、品質・信頼性の低下につながります。特に車載製品は、夏季の直射日光による車室内の高温環境や長時間使用などの厳しい条件下でも安定した動作が求められるため、発生した熱を適切に制御する熱設計が不可欠です。

しかし、熱設計だけを最適化すれば良いわけではありません。例えば、冷却性能を高めるためのファンの音が、車室内では不快なノイズになることもあります。デザイン性や搭載スペースの制約のため小型化、薄型化を進めると、熱が集中しやすくなります。
機能、信頼性、サイズ、コストなど、複数の要求のバランスを取りながら、発生した熱を効率よく制御することが重要な役割です。

設計初期から熱設計を取り入れ、品質を高める

アルプスアルパインでは、製品コンセプトを検討する設計初期段階から熱課題を検討する、「フロントローディング」の考え方を重視しています。早期に消費電力や発熱量を把握してファンやヒートシンクなどの放熱機構の必要性を検討し、設計品質を高めることで、後工程での設計変更や追加対策のリスクを抑えています。

また熱設計では、製品設計者、熱解析担当者、熱の有識者という三つの視点を活用しています。設計者が機能や構造との両立を図り、解析担当者がシミュレーションによる温度予測を行い、有識者がレビューを実施することで、信頼性向上に取り組んでいます。

熱解析・熱評価技術

系統的かつ網羅的な熱解析の取り組み

熱設計では、「伝導」「対流」「放射」という三種類の伝熱現象を理解することが重要です。「伝導」は物体内部や接触する物体間を熱が移動する現象です。「対流」は空気や液体など流体の動きによる熱移動であり、「放射」は赤外線などの電磁波による熱移動を指します。

電子機器では、半導体チップの熱が基板や筐体へ伝導し、周囲の空気へ対流や放射によって移動します。これら三種類の伝熱を組み合わせて、発生した熱を筐体の外へ効率的に逃がすことが熱設計のポイントです。

アルプスアルパインでは、複数の解析ツールを組み合わせて発熱源から外気までの熱の流れを予測しています。

まず熱計算ツールによって基板や放熱面積が温度に与える影響を簡易的に評価し、放熱対策の方向性を検討します。次に熱流体シミュレーションを用いて製品内部の温度分布や空気の流れを可視化することによって部品温度を確認し、対策を検討します。そして1D CAEツールを活用して半導体チップの温度上昇を予測し、部品が適切な温度範囲で動作するかを確認します。
これらを組み合わせることで、設計初期段階から高精度な熱解析を実現しています。

解析ツールに加えて、実機評価による検証も行います。温度測定や熱分布評価の結果と解析結果を比較することでモデル精度を向上させ、より信頼性の高い熱設計へつなげています。

熱解析と実機検証による設計最適化事例

熱解析と実機評価を組み合わせることで、製品性能と品質を両立した事例が「BIG X(車種専用設計の大画面カーナビゲーションシステム)」です。
BIG Xには、高速CPUに加え、映像処理を担うGPUや音声・画像処理を担うDSPが搭載されており、内部では大きな熱が発生します。
BIG Xでは、発熱量の大きいCPUとその他の電子部品で排熱経路を分ける構造を採用しています。CPUには専用の冷却ファンを配置する一方、その他の部品については別のファンで排熱することで、それぞれの発熱特性に応じた冷却を実現しています。また、吸気と排気の流れを制御することで、限られた筐体内部でも効率よく熱を排出できる構造となっています。こうした放熱設計の工夫により、ハイパフォーマンスかつ高音質を実現しています。

先端放熱技術

先端放熱技術「ベイパーチャンバー」の検討

将来的な消費電力および発熱量の増加に備え、アルプスアルパインでは「ベイパーチャンバー」の検討を進めています。現在、車載機器の熱対策にはファンやヒートシンクが用いられていますが、それだけでは対応が難しい高発熱デバイスに対し、高い熱拡散性能と省スペース化を両立できる先端放熱技術として期待されています。

ベイパーチャンバーは、発生した熱を素早く広い範囲へ拡散する放熱デバイスです。内部には液体と熱を循環させるための構造が組み込まれており、液体の蒸発と凝縮を利用して熱を効率よく移動させます。この仕組みにより、熱が特定の箇所に集中することを防ぎ、広範囲に拡散することで、高発熱デバイスの温度上昇を効果的に抑えることができます。

アルプスアルパインは、金沢工業大学との共同研究を通じて、精密微細加工を応用した放熱能力向上及び放熱予測精度改善を目的とした内部の可視化と、熱抵抗モデルの最適化を進めています。

自動運転を見据えた熱設計の未来

今後、自動運転の社会実装に加え、車載ディスプレイの大型化や高性能プロセッサの搭載が加速し、車載機器の消費電力と発熱量はさらに増加すると予想されています。一方で、車載部品には小型化や薄型化も求められるため、放熱に使えるスペースが減り、より厳しい熱設計が求められます。

アルプスアルパインでは、車室内全体を安全・快適・感動を提供する空間へ進化させるデジタルキャビンの実現を目指しています。こうした次世代モビリティの実現には、高性能な電子機器を安定して動作させる熱設計技術が不可欠であり、熱設計の重要性は今後さらに高まると考えられます。

アルプスアルパインは、設計・解析・実機評価を一体化した熱マネジメント技術をさらに進化させ、高性能化と小型化が進む次世代モビリティやデジタルデバイスの安全性・信頼性向上に貢献していきます。

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