音響技術
「音」の可能性を拡張し、モビリティに新たなサウンド体験をもたらす音響技術
アルプスアルパインは、40年以上にわたって日本・欧米の自動車メーカーを中心に、多彩な音響システムを開発しています。
アルプスアルパインの車載音響システムへのこだわり
アルパインブランドは、ハードウェアの製造だけでなく、車室内を「音楽を聴く空間」として最適化するサウンドチューニングも行っています。レイアウトが定められ、スペースが限られた車は、原音を再現するのが難しい条件下にあります。音の反射や吸音などの特性が一定でないため、スピーカーにひずみがあるとイコライザーフィルターなどによる補正を有効に機能させることも期待できません。アルプスアルパインは、「広帯域」と「低ひずみ」に着目し、スピーカーを設計しています。アルプスアルパインの代表的な技術は、ひずみを抑え、人間の可聴音域である20Hzから20kHzの範囲内の全周波数を漏らさず再生することです。また、カーボングラファイトやナノファイバー製の振動板も取り入れ、広帯域での繊細な音のニュアンスまで引き出しています。

加えて、こだわってきたのが“時間精度”です。電気回路内のズレ、到達時間のズレという、車内だからこそ生じやすい2つのズレに対応することは、理想的な車内音響を作り上げるうえで欠かせない視点となります。それぞれのスピーカーから出る音の乱れを補正するために用いられるのが、オーディオ・プロセッサーによってタイミングを合わせるタイムコレクション機能です。アルパインブランドのフラッグシップモデル「AlpineF#1Status(アルパイン・エフナンバーワン・ステータス)」では、着座位置に合わせて、スピーカーからの音の到達タイミングを時間軸補正し、音の到達タイミングと音色をシンクロさせることができます。

高度なノウハウと経験を持った、「音」のスペシャリストが生み出すもの
アルプスアルパインでは、車種・環境にマッチした音響システムを構築するため、自動車の試作設計段階からサウンドチューニングを手がけています。サウンドマイスターが音楽のパラメーターを調整し、綿密なチューニングを施します。

サウンドマイスター 中村 清志氏
サウンドマイスターは音響に関する高度なノウハウと経験をもち、社内の研修制度で訓練・育成を行っています。音のスペシャリストを育てるための研修制度を自社で用意していることも、当社の能力開発制度の特徴です。開発に関わる社員はバンドやアマチュアオーケストラのメンバーであることも珍しくありません。プライベートでも音楽を楽しむ開発者が携わっているからこそ、真摯な音作りができるのです。

音をコントロールし、新時代のカーライフを追求する
アルプスアルパインはスピーカーのサウンドチューニングに加え、車内の音をコントロールする技術にも注力しています。その成果がアダプティブサウンドテクノロジー「RoadEQ」です。RoadEQは、走行中に変化するノイズ環境をマイクで計測・解析し、最適な周波数バランスに合わせて、リアルタイムで音を補正処理するシステムです。路面状況やエンジン、エアコンなどにより、走行中に目まぐるしく変化するノイズ環境を解析して周波数バランスを補正します。
また、新たにゾーン別サウンドシステムを開発し、イヤホンなしで、それぞれの座席でそれぞれの聞きたい音だけが聞こえる技術を確立しました。ゾーン別サウンドシステムは、シートに内蔵したスピーカーから再生した音と同時に打ち消し音を発生させ、各座席を見えない空気のカーテンで仕切って音をセパレーションする機能です。座席ごとに聞こえる音を変えることができ、同乗者を気にせずにハンズフリー通話ができる、自分だけで聴きたい音楽を再生するなどの使い方ができます。

アルプスアルパインの音響技術の取り組みは、車外にも向けられています。エンジンのこもり音など走行中のノイズに打ち消し音をぶつけてノイズを消すアクティブノイズコントロールでは、騒音を抑えることに成功。また電気自動車やハイブリッドカーに搭載が義務付けられている車両接近通報装置の分野にも進出し、エンジンサウンドを作り出す「AVAS(Acoustic Vehicle Alerting System)」によってECU(電子制御ユニット)やアンプを内蔵したマルチスピーカーシステムで普通車やSUV、スポーツカーなど車種に合わせたエンジン音をリアルタイムに再生することができます。
ゾーン別サウンドシステムやAVAS(Acoustic Vehicle Alerting System)は、自動車をめぐる環境の変化に合わせて生まれた次世代の製品。音響を通じて様々な車内外の音をコントロールし、よりよいカーライフを追求することが、当社の車載用音響システムの目標です。
高品質なハードウェアとソフトウェア、訓練を受けたスペシャリストだからこそ可能なチューニング。どれが欠けても、納得のいく音響システムの構築はできません。
「良い音を作りたい」、「良い音を出す製品をお客様に届けたい」という情熱こそが、アルプスアルパインの音響技術を支える源となっています。