磁気技術
磁気による非接触センシングで自動車やデジタルデバイスの未来を作る
目には見えない磁気の力がおよぶ空間を利用し、非接触で近接や回転、方位などを検出する磁気センサー。対象に触れることなくセンシングを行えるため接点の摩耗が起こらず、高い耐久性を兼ね備えているのが特徴です。自動車やスマートフォン、家電製品、パソコンなど、その実用範囲は広く、私たちの生活に欠かせない技術となっています。
長年磁気技術を所有してきたアルプスアルパインでは、センサー単体の開発からモジュール化まで幅広く展開し、多種多様な用途に対応しています。
「飽和型」「リニア型」双方の磁気センサーを研究開発
アルプスアルパインは、データの読み込みや書き込みを行うオーディオ用の磁気ヘッドから、磁気技術の開発をスタートしました。その後ハードディスクドライブの磁気ヘッドを手掛け、現在では磁気センサーを中心に多くの製品をラインナップ。30年以上に渡り、磁気技術に取り組んでいます。

磁気センサーは、磁気がおよぶ空間の検出方式により、大きく「飽和型」「リニア型」に分けられます。

飽和型は、主に磁石とともに使用される検知方式となります。磁石から発生する磁気の力がおよぶ空間に、誤差要因となる他の磁気が存在しても高精度で測定でき、さまざまな外部の力を受けても影響されにくい性能が特徴です。飽和型センサーの代表例として挙げられるのが、ノートパソコンの開閉の検知。本体とディスプレイ側に、それぞれ磁石と磁気センサーを搭載し、近接距離をセンシングすることで開閉を判断しています。
一方リニア型は、磁石を必要としない検知方式で、磁気の力がおよぶ空間を細かく測定できる感度の性能が優れているのが特徴となっています。リニア型センサーの代表例は、スマートフォンのマップアプリにおける方位検出。周囲の磁界から、方位を割り出す機能を担っています。
アルプスアルパインでは、双方の方式において高い技術力を有しており、それぞれの長所を活かした製品づくりを進めています。
自動車の進化を支える飽和型センサー
アルプスアルパインの磁気技術において強みとなっているのが、飽和型、リニア型ともにGMR(巨大磁気抵抗)素子を採用している点です。
非常に高い感度を持つGMRは、微小な磁気がおよぶ空間の変化を検知できるため、高精度での磁気測定が可能です。また、非常に大きな磁界でも安定したセンシングが得られることがアドバンテージとなります。
更に、GMRは省エネルギー性に優れ、バッテリー駆動のデバイスでの利用にも最適です。
アルプスアルパインの飽和型センサーが多く用いられているのが、自動車におけるセンシング領域です。これまでハンドルやペダル操作には、回転を伝えるロッドや踏み込んだ量を伝えるワイヤーが使われていましたが、時間の経過とともに部品の摩耗が起こることが課題となっていました。
非接触でセンシングできる磁気センサーのメリットは、これらの部品の疲労や摩耗を防ぎ、機能性の保持、製品の長寿命化を図れることです。
昨今の車両では、一般に1台あたり50~100個の磁気センサーが搭載されていますが、当社では、上記のハンドルやペダルなどの操作系に加え、トラクションモーターやオイルポンプなど車両の中枢的な機構に用いられる製品も開発しています。
また、今後は家電やゲーム機のコントローラーといった他領域での、飽和型センサーの活用を想定しています。従来、オンオフの判別、角度の検出などに多く採用されてきたのが、GMRに比べ感度は低くなるものの、シンプルな構造でコストが抑えられる方式のセンサーでした。しかし近年では、ニーズの細分化、デバイス自体の進化に合わせ、搭載されるセンサーにもより高度な水準が要求されるようになっています。

アルプスアルパインは、長年培った磁気技術を応用し、小型、高感度、高精度、外部の力を受けても影響されにくい優れた性能を持つ飽和型をGMRセンサーでのソリューションに提案していきます。
スマートフォンの高機能化に貢献するリニア型センサー
高い磁気感度を持つリニア型センサーにおいて、アルプスアルパインが多く手掛けているのが、スマートフォンに搭載する方位センサー。微小な磁気がおよぼす空間の変化を検知できるよう精度を高めることで、精密な位置検出や変位測定が可能となっています。
また、同じくスマートフォン用の製品としてリリースしているのが、カメラレンズ用の磁気センサーです。スマートフォンのカメラレンズでは、大口径化がトレンドとなっています。ズームや手ブレ補正をコントロールするアクチュエーターとともに、そのセンシングを担う磁気センサーの役割がますます大きくなっています。アクチュエーターの開発も手掛ける当社では、磁気センサーと合わせ、高機能化が進むスマートフォンのニーズにお応えしています。
さらに、飽和型センサーと同様に、GMRの低ノイズ特性を活かし、EV化が進む自動車領域でも当社のリニア型センサーは広く用いられています。自動車の外から自動車の運動に影響をおよぼす力となる、さまざまな電圧がかかっている空間や磁気がかかっている空間が存在する車体においても、小さな磁気パターンや微弱な変動を捉えられるセンサーとして、バッテリーのマネジメントシステムを構築しています。
さまざまな外部の力を受けても影響されにくく、他の磁気が存在しても高精度で測定できる飽和型センサー、磁気感度に優れるリニア型センサーの両方の強みを生かした開発につながっているアルプスアルパインの磁気技術。
これからも磁気技術を発展させ、磁気センサーの新たな可能性を創造していきます。