EMC評価技術
つながる社会の信頼性を守る―アルプスアルパインのEMC評価技術と世界基準への挑戦
テレビ、ラジオ、スマートフォンなど、私たちの生活は電波に支えられています。近年ではAI・IoTの進化により、スマート家電やウェアラブル機器など、電波を利用する機器はさらに多様化し、快適で便利な暮らしに欠かせない存在となっています。
また、自動車においてもカーナビゲーションシステムのGPSをはじめとした各種通信において電波を利用しています。特に、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の進展やソフトウェアによる制御が進むことにより、車載電子機器の高速通信化が加速しており、EMC(電磁両立性)の重要性はますます高まっています。
アルプスアルパインはこのような電波環境のなかでも機器が正常に動作することを確認するため、EMC評価技術を用いて各種国際規格に則った試験を行っています。
飛び交う電波から電子機器を守るEMC評価技術
EMC(Electromagnetic Compatibility)は日本語で「電磁両立性」と呼ばれます。電子機器が発する電波によって他の機器に悪影響を及ぼさず、かつ他の機器からの悪影響も受けない能力のことです。
EMC評価とはEMCの能力を評価するもので、他の機器へ与える影響を「エミッション」(Emission)、他の機器から受ける影響を「イミュニティ」(Immunity)という2つの軸で評価します。
エミッション試験は、開発製品が発する電波ノイズを測定する試験です。電子機器はどうしても電波ノイズを発してしまい、これが他の製品に干渉して誤動作の原因となれば、お客様が安心して使用できません。そのため、電波法や各国の電波認証基準に準拠する必要があります。
一方、イミュニティ試験は、外部からの電波ノイズに対する製品の耐性を評価する試験です。世の中に飛び交う様々な電波の影響を受けても、製品が正常に動作することを確認します。このように、ノイズを出さない、ノイズに耐えられるという2つのポイントを両立させることが、EMC評価の本質です。
アルプスアルパインは安心して使用できる製品を提供するために、自社で製造する車載ECU、センサー、通信モジュール、ディスプレイ、車載音響製品などのEMC評価を行っています。
アルプスアルパインのEMC評価技術の強み
アルプスアルパインは世界中の自動車メーカーの試験規格に対応する高度なEMC評価技術をもっています。自動車メーカー5社のOEM試験所認定を取得しており、各メーカー独自の試験方法にも対応しています。複数メーカーとの取引を通じて蓄積されたノウハウは最新の試験要求への素早い対応を可能にしており、総合的なEMC評価を実現しています。最大の特長は、EMCテストプランの作成から試験実施、報告書発行まで全てを自社内で完結できることです。これにより、開発期間の短縮を実現しています。
また、民生機器に対してはFCC(米国連邦通信委員会)や一般財団法人VCCI協会にも登録されているため、VCCIマーキングなどEMC法規の適合性について自己宣言が可能です。
ISO/IEC 17025認定取得による信頼
ISO/IEC 17025試験所認定をアメリカの認定機関A2LA(American Association for Laboratory Accreditation:米国試験所認定協会)から取得しています。仙台開発センター(古川)の登録番号は「#2015.01」、いわき開発センターは「#2015.02」です。
両拠点とも2003年にISO/IEC 17025認定を初めて取得して以降、現在まで約20年以上にわたり認定を維持しています。長期にわたる認定維持は、高い試験技術と品質管理体制の証であり、国際的に認められた試験所として信頼性のあるレポート発行を可能にしています。
EMC評価試験と準拠規格(一例)
アルプスアルパインは、一般的なEMC試験をすべて自社で行う設備を有しています。
-
放射エミッション(車載)
試験規格:CISPR 25電子機器から発せられた電波の強度を測定する試験
-
伝導エミッション(車載)
試験規格:CISPR 25電子機器の電源線や信号線(通信線)に発生する伝導ノイズの電圧、電流を測定する試験
-
放射イミュティ試験 ALSE(車載)
試験規格:ISO11452-2車載用電子機器やワイヤーハーネスを対象に電界結合による照射を行い耐性を評価する試験
-
伝導イミュティ試験 BCI
試験規格:ISO11452-4車載用電子機器の電源や信号線のハーネスにRF電流を流して耐性を評価する試験
-
無線機アンテナ近接試験
試験規格:ISO11452-9車載用電子機器やワイヤーハーネスにポータブル無線機を想定した近傍電磁界を照射し耐性を評価する試験
-
磁界イミュニティ試験
試験規格:ISO11452-8車載用電子機器やワイヤーハーネスに磁界を照射して耐性を評価する試験
-
過渡電圧試験
試験規格:ISO7637-2, ISO7637-3車両内で発生する電源サージに対する車載用電子機器の耐性を評価する試験
-
静電気試験
試験規格:ISO10605人体に帯電した静電気に対する車載用電子機器の耐性を評価する試験
-
放射エミッション(民生)
試験規格:CISPR 32電子機器から発せられた電波の強度を測定する試験
-
放射イミュティ試験(民生)
試験規格:IEC61000-4-3電子機器がテレビ、ラジオ、スマートフォンなどの電波に対して耐性を持っているか評価する試験
EMC評価のための設備・試験環境
アルプスアルパインはさまざまなEMC試験を行うための施設や試験環境を有しています。
EMCテストラボ
EMC評価は仙台開発センター(古川)といわき開発センターの2拠点で行っています。古川テストラボは、静電技術や電波・高周波技術を搭載した製品のEMC評価に対応する設備を完備しています。一方、いわきテストラボは大型ディスプレイやサウンドシステムといった大規模製品の試験環境を整備し、それぞれの強みを活かした役割分担を実現しています。
2025年に完成したいわき新棟は、試験要求の変化に対応する拡張性を備えた構造を採用しています。最新の省エネ空調・照明設備を導入して環境に配慮しています。また、ソーラーパネル設置可能な屋根強度設計も実現し、次世代の試験施設として稼働しています。両拠点ともISO/IEC 17025認定試験所として、国際的に認められた高品質なEMC試験サービスを提供しています。
試験設備
各種EMC評価試験を行うために必要な装置は試験や対応する規格によって異なるため、準拠する規格の数だけ試験設備を有しています。
これらの試験を行うために「電波暗室」と呼ばれる電波暗室内部の電波は吸収し、外部からの電波を遮断する特殊な施設が必要です。アルプスアルパインは10m法電波暗室、3m法電波暗室、車載用電波暗室など様々な用途に対応した電波暗室を合計で8基保有しています。
体系的・継続的な人材育成
EMC分野の国際資格であるiNARTEの資格保有者が多数在籍しており、全EMC評価試験従事者の約 60%が資格を保有しています(2026年現在)。今後70%まで資格保有者の増加を目指しています。
また、電気系技術者を対象にEMC技術の実技を含む研修を実施し、段階的な教育プログラムにより新人から中堅・上級者まで継続的なスキル向上を実現しています。
アルプスアルパインはEMC評価試験をすべて自社内で行っている数少ないメーカーの一つです。自社内で行うことでスピーディーかつ低コストな試験体制を確立でき、設計者へのフィードバックもスムーズに行えます。私たちは最先端の設備と専門性の高い人材によって、EMCの信頼性の高い電子機器を社会に提供していきます。