接点・抵抗技術
創業以来磨き続けるアルプスアルパインの原点
さまざまな機器を扱う際に使用するスイッチやボリューム。オン/オフの切り替えなどの操作ができるスイッチには「接点」の技術が、ボリュームを回したり左右に動かしたりすることで出力の調整ができる装置には「抵抗」の技術が使われています。
この接点と抵抗の技術は、電気で動くほぼすべての機器に使われていると言っても過言ではありません。人と機械、そして機械と機械の連携を担う技術だからこそ、アルプスアルパインのこだわりがつまっています。
1948年にロータリースイッチの開発からスタート
旧アルプス電気が初めて量産した製品がロータリースイッチでした。回転することで接点を変更し通電する回路を切り替えるこのスイッチから、抵抗体材料技術へと枝分かれし、現在も受け継がれる抵抗技術へと発展しました。

ロータリースイッチ
当社が手がける抵抗技術は、その名とおり抵抗値が固定されている固定抵抗ではなく、接点の位置を動かすことで抵抗値を変化させる可変抵抗が主体です。
接点・抵抗の技術は70~80年代においてカセットプレーヤーやビデオデッキに必須のものとして発展し、近年では車載用センサーや小型化するデジタル機器に搭載されてきました。またゲームのコントローラーやスマートフォンのスイッチ、各種家電の操作用ボタンなど、現在でも数多くの機器にアルプスアルパインの接点・抵抗技術を応用した部品が取り付けられています。
「長寿命化」と「フィーリング」へのこだわり
創業当初より培われた技術を蓄積し、さまざまな商品の開発、展開を行うだけでなく、アルプスアルパインがこだわっているのが「長寿命化」です。スイッチ類は幾度も操作するため、負荷がかかりやすい部品です。なかでも、部品をスライドさせてオン/オフを切り替える摺動接点は、部品同士が擦れて摩耗することが避けられません。摩耗を防ぐには潤滑剤となるグリースが用いられますが、問題となるのが、グリースは導電性を持たないことです。グリースが付着した接点は導通が不安定となるため摺動接点を長寿命化するには、耐摩耗性と電気の導通のバランスをとることが必要となります。
当社では長年の接点技術のノウハウから、最適なバランスとなるグリースのレシピを開発。現在アルプスアルパインで製造しているスイッチには、このオリジナルの接点グリースを使用することで、接触安定性を維持し、スイッチの寿命を延ばすことに成功しています。
アルプスアルパインが開発したタクトスイッチ® で重要となるのが、押した際のフィーリングです。そのため、バネやラバー部品を組み合わせ、クリック感の有無や軽重など多様な感触のスイッチを開発。特に近年では、操作した時の感覚を磨き上げる研究を人間工学に基づいて進めています。
さまざまな機器の使用シーンや必要とされる用途に合わせ、現在アルプスアルパインが販売しているスイッチは、タクトスイッチを合わせて100シリーズ以上あり、シリーズごとに派生製品を合わせると1000種類以上に及びます。年間生産は約50億個で1秒間に約160個作られている計算となり、2023年までのタクトスイッチの累計生産は1,550億個以上。この種のスイッチでは世界の数あるメーカーの中でトップクラスのシェアを誇り、多くの客様へ製品を供給しています。

HMI(Human-Machine Interface)から
MMI( Machine-Machine interface )の領域に広がる車載用スイッチ
昨今では静電容量センシングを用いたタッチパネルや磁気センサーなど多種多様なインターフェースが開発、実装されていますが、接点・抵抗技術を用いたスイッチ・ボリューム類は高い信頼性から現在でも数多くの機器で使われています。
近年ニーズが高まっているのが車載用途です。これまで車載用では窓の開閉用のスイッチなど、人と機械を繋ぐHMIとして用いられるのが一般的でした。しかし、自動車のハイテク化、また電動化が進んだ現代では、機械同士が連携するMMIの装置が多数搭載されています。
ドアロックをはじめ、モーターの動作の検知、あるいは自動運転といったセンサーによって機械が判断するアウトプットにおいて、自律的に機能するスイッチは今や車に欠かせない製品です。従来の「人が操作するスイッチ」を超え、車載コンピューターと連携し、各部のシステムを円滑に作動させる範囲へと接点・抵抗技術は広がっています。

多くは車室内に設けられるHMIと違い、MMIは車両外装のドア周りやメカ駆動部の動作検知などシビアな環境で用いられます。こうした環境に対応できる耐震性や防水性に優れたスイッチとするため、当社では両面摺動という、可動接点が固定接点の両面に接触する構造をいち早く開発。片面で接点を保持する通常の摺動接点の弱点を克服し、クリップ状の可動接点が常に固定接点を挟むため、振動への安定性だけでなく、粉塵などにも強いのが特長です。
この両面摺動方式は今では多くの車に用いられており、車載用スイッチのスタンダードとなっています。
接点・抵抗技術を使った製品の強みは、構造がシンプルであるがゆえに外部からの影響に強く、安価で頑丈であることです。アルプスアルパインの接点・抵抗技術はこの強みを磨き続け、70年もの間、開発・製造を続けてきました。
当社の基礎を支える接点・抵抗技術は、今後も時代のニーズに適した進化を続けていきます。