
操作感触の「ズレ」をなくし、シームレスなインテリアデザインを実現。
ダブルアクションタイプのタクトスイッチ® で挑んだ、次期車両モデルの“感触品質”改革。
- 部署:
- 設計開発部
背景
車室内の操作インターフェイス設計に強みを持つ自動車部品メーカーX社。あるとき、OEM(完成車メーカー)の担当者から「次期モデルではインテリア全体の操作感を統一したい」と相談を受けた。そこで、パワーウィンドウ操作部の感触品質について早急な見直しを行うことにした。
課題
異なるスイッチ感触が統一感を損なう…車載向けに適した2段階スイッチを探す日々。
X社では、HVACやステアリング周辺に移動量0.7mmの車載向けのタクトスイッチ® を採用しており、明確なクリック感を実現していました。一方で、パワーウィンドウなど2段階の押し操作が必要な箇所では移動量1mm以上のラバーコンタクト方式を採用していたため、操作体験に一貫性を持たせにくいという問題を抱えていました。
- 課題のポイント
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- シャープな操作感触への統一が困難だった
- ラバーコンタクトはサイズが大きく、薄型・小型設計の障壁となっていた
- 車載レベルに耐えるダブルアクションタイプのスイッチがなく、構造は複雑でコスト高になっていた
設計開発部のK氏は、こう振り返ります。
「他の操作部が明確なクリック感であるのに対し、パワーウィンドウではソフトなクリック感であったため、全体の一体感を損なっていました。OEMからも指摘されており、正直なところ設計者としては歯がゆかったですね」
さらにラバーコンタクトは構造が大きく、小型・薄型化が進むインテリア設計において、意匠や取り回しの自由度を阻害していました。設計側の思い描く“シームレスな操作部”に対し、実装上の制約が立ちはだかっていたのです。
また、市販のダブルアクションタイプのタクトスイッチ® も試してみたものの、民生用途の製品は耐久性や作動力の点で車載要件を満たせず、採用には至りませんでした。
加えて、既存の2段操作構成は複数の部品を組み合わせて実現していたため、製造工程が煩雑になり、コストや工数がかさむ一因にもなっていました。
「試作のたびにすり合わせが必要で、毎回、細かな調整に追われていました。構造も感触も、何をどこまで直せばいいか明文化されていないので、ゴールが見えないまま手を動かしている感覚でした」(K氏)
設計開発部では、統一感のある明瞭な操作感を実現するためには構造的にも感触的にも根本的な見直しが必要だと痛感していました。しかし、解決策を見いだせないまま、時間だけが過ぎていきました。