CTOメッセージ

人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します

相原 正巳

当社は1948年に創業し、ロータリースイッチを最初の製品として世に送り出しました。今日までの75年間、電子機器と自動車の進化に対してお客様とともに歩み続け、コンポーネント、センサー・コミュニケーション、モビリティの3つの事業を軸として、メカトロニクス設計、磁気、高周波、静電、音響、IC設計、ソフトウェア等の多くのコア技術を育んで参りました。

年々深刻化する環境問題に加えて、地政学的リスクの増大に伴ったバリューチェーンの再編が加速してきており、我々を取り巻く環境も急速に変化してきています。当社においてはハードウェアとソフトウェア両方のコア技術を武器に、感動・安全・環境に対する新たな付加価値を創造することで、これらに持続的に対応していくことが求められています。

私たちの技術はお客様の“こんなことをしたい”という夢を叶えるために使っていただくものだと考えています。常に変化し続けるお客様の“夢”にお応えするために、国内外の外部機関との連携強化も積極的に行いながらEngineering Capabilitiesの改革を進めています。研究開発分野においては、包括的連携協定や共創研究所を設立している東北大学を含む5大学との連携を深めることにより、10年先、20年先にも通用するイノベーションに繋がる技術開発力の習得や社会課題を技術課題へ転換できる思考をもった人材の育成に力を注いでいます。

コンポーネント製品においては、これまで経験とノウハウによってチューニングされてきた製品特性においても理論に裏打ちされた技術体系を確立していく必要があると考えています。例えば当社の代表的な製品であるタクトスイッチ®は作動力とクリック率、そしてストロークという3つのパラメーターで感触が決まります。これらのパラメーターはハウジングコンビ、メタルドームそしてステムと呼ばれる3つの構成部品によってコントロールできますが、感触を確認するためには実際にサンプルを作って試して見るしかなく、お客様が本当に欲しい感触に辿り着くまでに何度も試作する必要があり、開発サイクルがどうしても長くなってしまうという問題がありました。
「サンプルを作成しなくても感触が確かめられ、お客様の開発リードタイム短縮へ貢献する方法はないか?」という思いから、数年前からは感性工学の研究も開始し、その取り組みの一例から感性工学に基づいた力覚提示シミュレーターを開発することで、サンプルを作成せずともお客様のご要求に応じた多様な感触を数値化に成功。お客様の開発リードタイム短縮に貢献することが可能となってきました。

センサー・コミュニケーションの領域では、当社がコア技術として位置付けている電波や磁気技術の深耕により車載市場への製品展開が拡大しつつあります。
ミリ波センサーはモーション検知、乗員検知、周辺障害物検知など。磁気はGMR(巨大磁気抵抗)式センサーを活用したEV向け小型高感度センサーなどがその一例です。これらのセンサーの性能を最大限に引き出すためには、専用のASIC(特定用途向け半導体)と組み合わせることが不可欠となります。
当社はアナログおよびデジタルICの設計機能を約20年前から有しており、センサーの特性や市場ニーズを熟知したエンジニアによる専用のASIC設計を可能としてきました。
社内設計されたASICは国内外の半導体ファンダリーサービスへ製造委託することで調達しており、社内にテストラボを設置し試作品の評価を可能とすることで、長期化するASIC開発サイクルの短縮化にも寄与しています。
このようにして最適化されたセンサーデバイスに内作のアルゴリズムを組み込むことで製品に命を吹き込み、他にはない差別化された製品として提供することで、お客様の期待に応えて参ります。

我々の中核ビジネスである車載向けモビリティにおいては、来るべきSDV(Software-Defined Vehicle)時代の到来に向けた開発に注力しています。
SDVは機能が将来にわたってアップグレード可能なアーキテクチャーで設計された車両を意味しており、ユーザーは車両購入後にもアプリケーションの追加やアップグレードによって新機能を追加したり、周辺機器の拡張ができたりするようになります。
当社においてはデジタル・キャビンというコンセプトのもと、強みであるヒューマンインターフェース(ディスプレイ、サウンド、アクチュエーター)とセンシング技術(静電、高周波、磁気)を活用し、これらをシステムならびにソフトウェアによって融合させることで、乗車、移動、降車までのすべてのシーンにおける安全・快適・感動といった顧客価値の創造とその最大化を目指した取り組みを行っています。特にソフトウェア開発においては国内外の企業との資本提携・業務提携により大規模なシステム開発へ対応できるリソース確保を行うことで来るべきソフトウェアセントリックな時代に向けての体制強化を図っています。

アルプスアルパインは「人と地球に喜ばれる新たな価値を創造します」という企業理念のもと、お客様のご期待に応えられるよう、コア技術の深耕と新しい技術開発への挑戦を続けて参ります。
これからのアルプスアルパインにぜひご期待ください。

執行役員 CTO

相原 正巳