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ドイツ全域のドイツポストDHL拠点に展開

物流遠隔監視システム

ドイツ全域に展開される
物流遠隔監視システムが、
充電なしで10年稼働を
実現できた理由。

5G時代の到来とともに、社会全体でのIoT化が進む現在、多彩な領域でその運用が求められています。アルプスアルパインはセンサやアクチュエータ、通信モジュールなどの技術とノウハウを活かし、独自のIoTソリューションを展開。産機市場でアナログメータの遠隔監視システム、工場・建設現場での作業者見守りシステム、機器やモータ・ポンプの故障予知保全ソリューションをはじめ、さまざまな取り組みを進めています。
そして、経済を支える物流業界の課題解決に貢献するソリューションも展開。フランスのSigfox社、京セラコミュニケーションシステム社との協業による「物流遠隔監視システム」を、世界最大手の国際輸送物流会社であるドイツポストDHL社に提供しています。

物流遠隔監視システムを動画でわかりやすくご紹介

物流資材の偏在・紛失という課題

物流業界は昨今、インターネット通信販売の拡大などにより、取り扱う貨物の量が世界中で小口化・短期化しています。これに伴い、貨物を効率的に搬送するためのカゴ車やパレットといった資材の管理が煩雑を極め、その解決が大きな課題となっています。カゴ車やパレットは年間に10%前後が失われていると言われ、多くの企業が損害を認識していながらも、それがどのように失われているかは把握できていない状況でした。
さらに、物流量は季節や時期によって変動幅が大きく、資材も需要変動に合わせて準備しておく必要があります。繁盛期に資材不足が発生すると納期遅れのリスクが高まり、資材の所在確認と効率的な管理が可能になれば、収益向上や経営効率の改善につながります。

独自の通信方式を採用した
物流遠隔監視システム

そこでIoTの活用により、物流資材の効率的な管理を実現するのが、アルプスアルパインが共同開発した物流遠隔監視システムです。従来この種のシステムでは、GPSと3G方式による資材の追跡が検討されてきました。しかし、GPSは物流資材が置かれる状況の約90%を占める屋内では、衛星からの電波が届かず測位が行えません。通信と端末の高コスト、バッテリーの動作時間が短いといった課題も立ちはだかっていました。さらに電池交換や充電がほぼ不可能であるため、資材の耐用年数と同じ約10年の電池持続が可能なことや、雨風・衝撃に耐える構造が求められました。

従来のGPS+3G方式によるシステム

当社が開発した物流遠隔監視システム「Long-lifetime Asset Tracker」は、Sigfox社の低消費電力で広範囲をカバーする通信技術LPWAと、Wi-Fi®アクセスポイントによる位置情報を組み合わせたSigfox Atlas Wi-Fi®サービスを採用しています。
Long-lifetime Asset Trackerが資材の移動など特定の現象を検知すると、周囲にある2つのMACアドレスを収集してSigfoxの基地局に送信し、基地局からクラウドに情報を送信。この段階で複数のSigfox基地局が受信した情報をもとに、発信された位置情報が取得できます(Sigfox Atlas Nativeサービス)。さらに位置を絞り込むため、取得したWi-Fi®アクセスポイントのMACアドレスをインターネット経由でデータベースと照合。より精度の高い位置情報を得ることができます。
低消費電力・低コストを実現し、屋内外でシームレスに精度50mほどの位置測位が可能です。GPSと比べて測定が早いというメリットもあります。

当社のSigfox+Wi-Fi®方式によるシステム

充電なしで10年稼働を実現した
アルプスアルパインの技術

物流資材に装着されるLong-lifetime Asset Trackerは、IoTシステムのPoC(概念実証)を手軽に実現できるアルプスアルパインの開発キット「センサネットワークモジュール」をベースに、必要な機能だけを残してカスタマイズしたものです。

センサネットワークモジュールの詳細はこちら

充電なしで物流資材の平均的な使用年数である10年稼働を実現するためには、認識したい資材の移動を漏らさず検知しつつ、通信回数を一日平均1.5回程度に抑える必要がありました。そこで資材がトラックに載せられて一定速度で一定時間動いた状況のみを検出するアルゴリズムを設定。倉庫内で少しだけ動いたような状況はカットし、特定条件での動作と静止状態に検知対象を絞り込みました。開発に際して実証実験を行ったところ、実際に資材が紛失しているだけでなく、倉庫の隅など死角の場所に固まっているケースも多いことが分かりました。このような状態の資材を発見して通常ルートに早期復帰させることで、使用率の向上が見込まれ、繁盛期の資材不足にも的確に対応できます。
Long-lifetime Asset Trackerはお客様にとって本当に必要な要件だけを知らせることで、圧倒的な低消費電力と物流資材の効率的な管理を可能にしました。

物流業務の改善に役立つ
付加価値の提供

Long-lifetime Asset Trackerはコストの低減にも対応し、カゴ車やパレットの約1/10となる価格設定を追究。それだけでなく、物流業務の改善に役立つ付加価値の創出にも取り組んでいます。このモジュールを導入することで、位置特定だけでなく、経過情報・誤配送情報・配送通知を荷主および送り先とタイムリーに共有したり、BIツールによる使用状況のデータ解析を行うことが可能です。データをKPI化して拠点別の資材回転率や所在台数、不動資材数、時間帯や曜日別の資材使用数、使用数の月間推移など、経営改善に活用できる情報の提供も検討しています。

Long-lifetime Asset Trackerの製品仕様は、物流資材に装着しやすい140×50×25mmのコンパクトサイズ。IP67の防水・防塵構造を採用し、雨風への耐性を強化。セキュリティに配慮した取り外し検知機能も備えています。このモジュールを搭載した物流遠隔監視システムは、ドイツ全域のドイツポストDHL拠点に約25万台が供給されており(2019年8月現在)、さらに北米やアジアをはじめワールドワイドの展開を視野に入れています。

お客様の要求を叶えた、
性能を引き算する大胆な取り組み

今回、アルプスアルパインが物流遠隔監視システムのために開発したLong-lifetime Asset Trackerは、24時間休むことなく密な測位を行うものではありません。搭載する機能をお客様が求める資材の位置特定に絞り込んだことで、充電なしでの10年稼働を可能にした製品です。
一般に製品開発とは、新たな機能を追加したりスペックを高めていくように、要素を足していくのが基本です。しかし、お客様と綿密な検討を重ねるなかで、プラスではなくあえてマイナスを選択。性能の絞り込みや機能を削っていくことで、本質的に必要とされる要素とコストの両立を可能にして、画期的なソリューションを実現することにつながりました。
アルプスアルパインは物流遠隔監視システムだけでなく、産機・インフラ・オフィス・小売など多彩な市場でIoTソリューションを展開。お客様それぞれの課題解決に貢献するソリューションプロバイダになることを目指しています。これまでの「モノ」づくりに加えて、「コト」や「サービス」の提供も通じて新たな価値を生み出していきます。