Senclear™

接着剤レスで高強度・高耐圧の接合を実現
高機能樹脂接合マイクロ流路デバイス

アルプスアルパインのマイクロ流路デバイスは、材料にCOP(シクロオレフィンポリマー)、COC(シクロオレフィンコポリマー)の高機能樹脂を使用しています。COP、COCはガラスに匹敵する特性から、レンズなどの光学系部品にも用いられる高機能樹脂プラスチックで、低い自家蛍光、優れた透過率、低タンパク吸着、高強度、ディスポーザブル対応、高い量産性など多くのメリットを備え、マイクロ流路デバイスに最適な材料です。しかし、成型表面が撥水状態になることから接合が難しいという問題があり、各社が対応に苦慮していました。この難題を解決したのが、アルプスアルパインが独自に開発した接合技術です。

独自技術で接合したマイクロ流路デバイス

流路断面

この技術では、COP、COCプレートを一度に7枚まで接合することができます。加えて、接着剤を使わず高強度・高耐圧性を実現しているのが最大の特徴です。接着剤や両面テープを使用した場合、成分がわずかでも溶出して検体に混入すると、毒性の問題などを含め正確な測定結果が得られなくなってしまいます。アルプスアルパインの接着剤レス接合デバイスは、まるで削り出しのように一体化した構造で、溶出物による汚染の不安がありません。

高度な金型技術によるミクロンレベルの精度を維持しながら、内圧10MPaの耐圧性能により、接合面から剥がれない、筐体破壊レベルの圧倒的な高強度と一体化を実現しました。これにより血液など検体を扱う流路で「剥がれない」「割れない」「漏れない」完全クローズドデバイスの機能を果たし、検査・分析の高い信頼性を担保します。アルプスアルパインはCOP、COCという優れた材料に特化した独自技術で業界初のソリューションを確立しました。

創薬開発や最先端医療へ広がる「Senclear™ 」

アルプスアルパインのマイクロ流路デバイス「Senclear™ 」は、それぞれの用途に合わせた流路構造設計と、接着剤レスによるプレートの積層構造により、3次元の流路を構成することが可能です。混合・合成・反応・精製・分離・単離・分注・抽出・濃縮・増幅・希釈・検出など、必要なプロセスを選んで組み合わせることができます。

「Senclear™ 」は検査・分析作業を迅速化・効率化するとともに、研究開発から臨床、認可承認まで膨大な時間と費用が必要となる創薬では、トランスレーショナルリサーチの大幅な短縮とコスト低減に貢献します。さらに、iPS細胞などの再生医療やバイオ医薬品など、最先端領域への活用が見込まれています。

マイクロ流路デバイス「Senclear™ 」の積層構造

進化を続ける「Senclear™ 」シリーズ

数多くのお客様からのご要望にお応えするため、アルプスアルパインのマイクロ流路デバイス「Senclear™ 」は今も進化を続けています。FDA認証取得済グレードでの強固な接合、高倍率観察や高い熱伝達効率を可能とするフィルムでの変形レス接合、フィルム同士を接合した極薄型流路の実現など、使用場面に最適な形状を実現する自由度の高い設計が可能です。

さらに接着剤や両面テープを使用しない接合で実現したのが、光検出セルやメンブレンフィルタなどの部品を流路デバイス内に内蔵できる技術です。少ない検体と試薬で検査分離・分析が可能となり、測定機器の小型化と検査の迅速化を実現、各種検査キットなどへの展開が期待されています。

新たな用途では、Organ-on-a-chipをはじめとするMicrophysiological System(MPS;生体模倣システム)が脚光を浴びており、これを実現する完全クローズドシステムとして、マイクロ流路デバイスが注目されています。主に医薬研究において臨床試験に至るまでには、創薬標的を探索し、生体での実験を行うことが必要とされています。従来の生体実験に使われる試料は、マウスやサルなど実験動物の細胞や組織片、個体であり、これら実験の過程には多大な労力と時間が必要です。また実験動物の福祉や倫理面から、動物実験に代わる技術へのニーズが高まっています。 MPSデバイスは細胞培養に必要なチャンバーを持ち、培養液を循環させるマイクロ流路を持つ特徴的なチップとなります。動物実験に置き変わる可能性の高いMPSデバイスの実現は、SDGsへの貢献、大幅なコストと時間を削減する技術として期待されています。

2液混合マイクロ流路デバイス
(サイズ:30×70×t2mm 材料:ZEONOR® 1020R)

流体シミュレーション

細胞培養/観察用デバイス
(サイズ:15×15×t4.1mm 材料:ZEONEX® 690R)

断面図

上下2温度帯往復型流路デバイス
(サイズ:26×76×t4.4mm)

構造図

フィルム型マイクロ流路デバイス

光学セル/カラム内蔵型マイクロ流路デバイス

COP、COC接合技術の新展開

高い接合信頼性と設計自由度を活かしたCOP、COC接合技術は、金型成型では出来ない形状を実現できる可能性を秘めています。COP、COCの持つ優れた光学特性を損なうことなく、つなぎ目のない一体形状で新たな光学部品を実現します。さらに低誘電率・低誘電正接は高周波特性に優れた新たな電子部品への応用も期待されています。独自のCOP、COC接合技術は、幅広い分野でこれからも進化を続けて参ります。

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