ソフトウェア技術

乗る人それぞれの快適空間を実現し、新たなモビリティ体験を生み出すソフトウェア技術。

自動運転や電動化をはじめ、100年に一度の大変革が加速する自動車の世界。新たな時代の課題に応えるソリューションが求められています。アルプスアルパインは車載領域で多くの製品を手がけてきたノウハウを活かしながら、ソフトウェア技術に力を注いでいます。モビリティの豊かな未来に貢献する、最新の取り組みをご覧ください。

アルプスアルパイン独自のソフトウェア開発

モビリティの現状と未来を見すえたとき、カギを握るのがソフトウェア技術です。アルプスアルパインはさらに高度化・複雑化するソフトウェアへの要求に応えるため、2021年4月宮城県仙台市に車載用ソフトウェアの拠点となる仙台ソフトウェア開発センターを開設。新しい人材も積極的に採用するなど総合的に体制を強化しています。また、ソフトウェアの開発では積み重ねてきたノウハウをもとに独自の手法を導入しており、ここではその2つをご紹介します。

MBTDD(Model Based Test Driven Development)

ドアモジュールスイッチ、ステアリングホイールの静電センサ、エアコンパネル、サウンドシステムのアンプ、ディスプレイなどのソフト開発にMBTDDが採用されています。
これはコード解析を採用したモデルベース開発とテスト駆動開発を組み合わせた当社独自のもので、すべてを自動化で開発できる環境を作り上げます。コンピュータ上でモデルを作成すると、プログラムコードが自動生成。そして、テストプログラムを作成すれば、コンピュータ上で自動的にテストを実施して評価が行えます。開発工程が大幅に減ることで期間短縮とコスト削減を実現。さらに、これまで人が行っていた作業をツールに置き換えることで、設計者に依存するような業務負荷を減らし、視覚的に理解しやすいモデル検証により効率性と品質を担保します。

ACiDS(AlpsAlpine Continues integration and Deployment Suite)

プログラムの量が1,000万行を超えるような大規模ソフトウェアではオープンソースを用いることが一般的ですが、毎日のように変更が加わり、自社のみでコントロールすることが難しくなります。そんな開発に採用されているのがACiDS。CI/CD(継続的インテグレーション/デプロイメント)にテストツールATAT(Alps Alpine Test Automation Tool)などを組み合わせた、当社独自の手法です。プログラムの変更点が少ない段階でソフトウェアを自動生成し、解析ツールで評価。変更箇所に異常がないかを確認したのちにソフトウェアを組み上げます。そして、実機に書き込んで自動テストを行い、問題があれば開発者にフィードバックする。この一連の流れを自動的に連携するツールです。
ACiDSは開発期間の短縮と作業の効率化を実現するとともに、確かな品質も担保します。アルプスアルパインはAndroid™※1やLinuxといったオープンソースを活用して1つにまとめ上げることを得意としており、さらに多くの開発で自動車メーカーの厳しい要求に応えてきた強みがあります。カーナビゲーションやインビークル・インフォテイメントなどのソフト開発にACiDSが採用され、成果を上げています。

※1 Android は Google LLC の商標です。

スマートファクトリーに貢献するソフトウェア

ソフトウェアは製品に注がれるだけでなく、製造工程に導入されて生産技術の向上にも貢献しています。当社ではリアルタイムの可視化システム、属人化しやすい設備をデジタライゼーションする保全履歴管理統合アプリケーション、ディープラーニング技術と画像処理技術を組み合わせたAI-OCRなどを採用。さらに、マシンビジョンやAIの活用による外観検査の自動化を進めています。これらの取り組みを支えているのがソフトウェアで、スマートファクトリーの推進に欠かせないものとなっています。

車載領域での豊富な製品実績

40年以上にわたり、車載領域で多くの製品を開発・製造してきたアルプスアルパイン。スイッチやセンサ、通信モジュールなどのコンポーネント。パワーウィンドウスイッチや電子シフターなどのモジュール。そして、多くのアワードを受賞したカーナビゲーション、感動の移動空間を演出するサウンドシステムや後席モニターまで、多種多様な製品を展開し続けています。
また、最新の製品事例として、株式会社東海理化と「静電ディスプレイパネル」を共同開発。ホバー&ジェスチャー操作や振動フィードバックにより、直感的でスマートな操作を可能にする次世代HMI製品です。こうした展開を通じて安心・快適なカーライフに貢献するとともに、ソフトウェアの知見も積み重ねてきました。

カーナビゲーション ディスプレイオーディオを含めた、多彩なラインアップ。
パワーウィンドウスイッチ 国内外で幅広い車種に採用、世界No.1の生産量。
リフトアップ3ウェイスピーカー クリアで高級感あふれるサウンドを生み出す。
リアカメラセーフティシステム 車両後方の状況を把握して、安全走行を支援。

その他の主な製品

ドライブレコーダー 走行中から駐車時まで、カーライフの安全を見守る。
電子ミラー カメラ映像を映し出し、常にクリアな後方視界を確保。
プレミアムサウンドスピーカー 際立つサウンドとデザインで、感動の音場空間を創出。
後席モニター 高精細な映像で、後席のエンターテイメントを充実。
カーエアコンパネル 優れた操作性で、車室内の快適環境をサポート。
テールゲート用キックセンサ 足の動きを検知し、テールゲートの自動開閉を実現。

モビリティの新たな課題にいち早く対応

大変革が加速する自動車産業のニーズをとらえ、モビリティの未来へ貢献するため、アルプスアルパインはソフトウェアをはじめとする技術をもとに、新たな取り組みを進めています。CASEやSDV(Software-Defined Vehicle)の課題に応え、より快適・安全・上質な移動体験をもたらす取り組みの一端をご紹介します。

CASE

Connected

自動車をIoT化するConnectedの領域では、5G対応通信モジュールを展開。日本企業として初めてC-V2X機能を搭載した車載用5G NRモジュールを開発し、2021年3月よりサンプル出荷を開始しました。さらに、5Gに車車間通信や路車間通信を融合する技術、完全自動運転時代に向けた50cmの位置精度技術などを近く市場に投入すべく取り組んでいます。

Autonomous

自動運転の領域ではキャビンモニタリングを推進。カメラやセンサを駆使してドライバーと乗員をモニターし、乗車時から通常走行・自動運転走行時までの安全性や快適性を高めるソリューションです。また、完全自動運転が実現すると、移動中の過ごし方が大きく変わります。ゾーン別サウンドは前席・後席の2ゾーン、または運転席・助手席・後席左右の4ゾーンで異なる音場を作り出すシステム。たとえば運転席ではスポーツ観戦、助手席では映画、後席はゲームというように、他の音に影響されず好きなエンターテイメントを楽しむことができます。

Shared&Service

新たなMaaS(Mobility as a Service)を生み出すこの領域では、カーシェアリングや社有車管理に役立つデジタルキーシステムを展開。スマートフォンを車のキーとして用いることで、施錠・解錠やエンジン始動、車両の効率的な管理が可能に。安全性の高い運用で、ユーザーと事業者双方の利便性を高めます。また、ドイツの大手企業ギーセッケ アンド デブリエントとの協業で、グローバル標準規格に準拠したワイヤレスデジタルキーシステム開発。2025年発売の新車への採用を目指しています。

Electric

異業種からの参入も相次ぎ、世界中で電動化モデルの開発・拡充が進む昨今の流れに対応し、電気自動車やハイブリッド車に搭載が義務づけられた車両接近警報システム(AVAS)を開発。音響製品で培ったノウハウを活かし、車種の特性に合わせて自然で最適な音を生成します。そして、エンジンのない電気自動車に向けたロードノイズキャンセレーションは、走行中の路面からの振動によるノイズを打ち消し、さらに静かで快適、エンターテイメントを堪能できる移動環境を実現します。

Software-Defined Vehicle

モビリティの未来を示唆する、もうひとつのキーワードにSDV(Software-Defined Vehicle)があります。これは近い将来、車の多くの機能がソフトウェアによって実現するというもの。スマートフォンやPCと同様に、車もハードウェアの共通化・標準化が進み、ソフトウェアによって個性や性能の差別化が図られるようになります。車室内で提供される機能をはじめ、自動運転の各機能、電気自動車の出力や加速度などもソフトウェアで決定する時代が訪れます。

また、現在の車は電子制御システムごとに合計100~200個ものECU(Electronic Control Unit)が搭載されており、構造の煩雑さを解消するために自動車メーカー各社はECUの統合化を模索。ドメイン型アーキテクチャ、ゾーン型アーキテクチャといった統合化が模索されています。
これらの動きに対応すべく、当社では独自のソリューションを追求しており、そのひとつが「キャビン・コントローラ」システムです。その名のとおりデジタルキャビンの中核を担って提供する機能を統合制御するとともに、ソフトウェアを更新することで車両の販売後も機能の追加やアップグレードが可能になります。まさにSDVとECU統合化に応えるソリューションです。

モノからコトへ、ソフトウェアで未来へ向けた価値を創出

アルプスアルパインはモノづくり=高品質な製品に加えて、新しい仕組みやサービスをお客様に提供する“コトづくり”にも力を注いでいます。そんなソリューションビジネスは車載のデジタルキーシステムをはじめ、2024年問題を見すえた物流ソリューション、製造現場での労災リスクを低減する作業者見守りソリューションなど多彩な分野に広がっています。
新たなソリューションを構築するためには、その基盤となるソフトウェアと人の力が何より重要です。当社では基礎教育から実践教育まで体系化された教育プログラムにより、ソフト設計者やデータアナリストのスキルアップを支援。また、モビリティ領域のソフト設計者はドイツのプレミアム自動車メーカーをはじめ、各社のエンジニアとともに最先端の開発に携わることができます。世界中の人々に新しい価値や新しい体験をもたらしていくのは、ソフトウェアである。そんな思いを込めて、これからも技術をさらに磨き上げていきます。

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