技術情報

品質保持と安定量産を支える

金型・精密加工技術

社内での一貫製造に
こだわり続ける、
高精度の金型・精密加工技術。

製造業=ものづくりの会社では、製品の素材や設計に関する技術だけでなく、その製品を作っていくための生産技術が極めて重要です。特に部品製造においては、大量の製品をいかに高品質かつ安定的に生産できるかが信頼を集めるポイント。アルプスアルパインではその実現に向けて、最適な生産ラインを構築する「工程設計」を行い、自動機やロボットを活用した「自動化」で生産効率を高めるとともに、金型の「精密加工」にこだわり続けています。精緻な金型を妥協なく追い求めるアルプスアルパインの取り組みをご紹介します。

創業時からこだわり続ける金型技術

金型とは、樹脂や金属等の材料を成形・プレス加工するツールで、同じ形状の部品を大量に作るために欠かせないもの。ドイツでは「生産工学の王」と讃えられるなど、ものづくりの要となっています。自動車、スマートフォンやパソコン、家電をはじめ、世の中にあるほぼすべての量産製品の部品は金型を用いて作られており、一台の自動車の製造には300~400もの金型が必要です。日本の金型技術は世界トップレベルを誇り、なかでもアルプスアルパインは金型をものづくりの強みとしています。1948年の創業時より、高品質で安定した生産を確立するためには、自社で精密な金型を作ることが不可欠と考え、金型製作を含めた一貫体制を築き上げてきました。

現在は宮城県・福島県の工場を中心に、国内の生産工場に金型部門を設置し、社内各部と密に連携しています。また、海外でも30年以上前から金型の強化に着手。現在では韓国・中国といったアジア地域や米国・欧州の工場に金型部隊および保全維持部隊が存在し、各地域で金型設計から量産まで一気通貫できる体制を整えています。
超精密加工技術を注いだアルプスアルパインの製品は、多いもので数百もの部品で構成されています。その部品を形成する金型はひとつの型で数十の工程を持つなど、それ自体がひとつの小さな工場と言っても過言ではありません。そして金型の設計には、製造プロセス全体の課題をクリアする高い創造性が求められます。要求される精度と品質、生産スピード、量産時の耐久性などあらゆる項目について、製品設計部門や製造部門と顔を突き合わせて検証。製品設計モデルをもとに3次元CADなどによるシミュレーションを重ねて金型設計が完成し、機械加工へと進みます。こうした綿密な作業により実現する金型の精度は±1ミクロン。個々の卓越した技がチームとして連なり、世界屈指の精密金型が生み出されています。

プレス型/プラスチック型ともに、
社内で一貫製造

金型は作る部品の素材や製造法によってさまざまな分類がありますが、大半を占めるのはプレス型とプラスチック型です。前者は鉄やアルミなどの金属を打ち抜いたり、曲げたりして加工するもの。後者は樹脂素材を溶かして固め部品へと加工するもので、複雑な形状を作ることができます。どちらも自動車、スマートフォン、家電をはじめ、多彩な分野の製品に用いられています。アルプスアルパインでは、このプレス型とプラスチック型の金型づくりをひとつの工場で行っており、生産するアイテムに合わせて最適な製造方法を構築できるのが強みです。そして、金属とプラスチックなど異素材の部品を一体化するインサート成形金型にも定評があります。
また、最適な製造方法を構築するため、焼き入れ・焼き戻しの熱処理加工から砥石を用いた研磨加工、マシニングセンタでの切削加工、電極やワイヤを用いた放電加工、人による金型パーツの組み上げを行う仕上げ加工まで、すべての工程をインハウスで対応することにより、金型部品の加工精度を高めています。

最先端を行く、
金型・精密加工の主な取り組み

ここではアルプスアルパインの金型・精密加工が力を注ぐ、取り組みの一部をご紹介します。まず特筆すべきは「軽薄短小」への取り組み。スマートフォンに代表される近年の電子機器はコンパクト化・スリム化が著しく、その部品として用いられる当社のタクトスイッチも最小のものが2.6×1.6mmと極小化が進んでいます。この流れを受けて、金型も超小型・超薄型に対応する技術を追究。米粒より小さい部品を完璧に仕上げるための微細加工、人の髪の毛より薄い0.04mmのすき間に樹脂を流しこむ技術を確立しました。さらに、極小でありながら複雑な形状を作ったり、バネ性など必要な機能を持たせる加工を行っています。
そして、光学機器の高精細を支える、樹脂の精密成形加工技術。これはスマートフォンやタブレットに用いられるタッチパネルフィルター、ゲーム機のディスプレイに使用されているものです。当社ではミクロンレベルのフラットな面を仕上げる技術で、タッチパネルフィルターやディスプレイに求められる光学的条件を満たしています。

さらに、小モジュールギヤを精密転写する技術も追究しており、その精度はJGMA(日本歯車工業会)規格で最高等級の0級以下、歯車誤差2ミクロン以下を達成。たとえば精密な機構が求められる小型プリンタでは、このギヤを用いることで紙送りの精度を向上させ、印刷のムラを低減できます。他にも自動車、家電、エネルギー、ヘルスケア分野などの機器で、駆動系機構の精度を高めることに貢献します。これらの事例をはじめ、アルプスアルパインが生産する多様なデバイスやモジュール製品に、最先端の金型・精密加工技術が反映されています。

技能を継承し、
人を育てる「ものづくり研修所」

こうした精密金型技術は、長年に渡って熟練の技術者が個々に蓄積する暗黙知の側面が大きいものでした。そこで金型をはじめとする生産活動の技能を体系化し、恒久的にお客様のご要望に応えていくために、当社では古川第二工場内に「ものづくり研修所」を設置し、次代を担う人材の育成に取り組んでいます。その歴史は1998年に技能研修所としてスタート。2009年にTIE(Total Industrial Engineering)教育を取り入れ、ものづくり研修所に改組して今に至ります。
現在では金型研修とTIE研修に加えて、部品加工/表面実装/現場監督/設備保全の製造プロ育成支援を実施。1年間で約400名に及ぶ国内外の研修生がここで学んでいます。
金型という分野は、技術や知識を学べる情報が世の中に極めて少ないものです。ものづくり研修所では当社の技術者たちが現場で培ってきたノウハウをもとに、オリジナルのテキストと教育方法を導入。また、海外に赴任するメンバーを対象にしたTIE研修、海外現地法人メンバーのためのTIEトレーナー養成研修など、人材教育をグローバルに広げる活動も行っています。
こうした技能伝承の成果として、金型部門には金型国家検定技能士が268名在籍(2019年時点)。20代前半の女性を含む、さまざまな社員がプロフェッショナルとして力を発揮しています。さらに、難関の特級技能士が8名、「宮城の名工」が2名、卓越した技能者として国が認める「現代の名工」が1名在籍。それぞれが培った技能を後進に伝え、アルプスアルパインのものづくり品質を高めるべく取り組んでいます。

どこにも負けない高品質・安定量産の
部品づくりを目指して

創業当初から自社一貫体制の金型製造にこだわり、人材育成にも力を注ぐアルプスアルパイン。その取り組みが生産活動全体に大きなメリットをもたらしています。当社では製品の設計初期段階から生産技術の観点を反映させる「フロントローディング」を推進しており、金型部門の技術者も早くから製品設計に参画。お客様のニーズを聞きながら金型の知見を入れることで、より優れた製品開発と生産工程を実現しています。

日本の製造業界では近年、コスト等の問題から金型を海外メーカーなどにアウトソーシングするケースが増えています。しかし、長期にわたって製品を加工したり、数が多いものを安定的に供給するためには、インハウスの金型として技術を絶えず進化させていくことが重要です。この変わらぬ理念が、品質保持と安定量産を支え、優位性を生み出すための原動力に他なりません。アルプスアルパインはこれからも日本一・世界一の金型・精密加工技術を目指し、ものづくりと人づくりを究めていきます。